どんな家庭にもあり得る状態です。「犯人探し」をしても意味がありません。
- そのときそのときには最善をつくして育てたつもりでも、子どもが長期にわたりひきこもると、家族は自分たちがその原因なのではないかと自分を責めたり、将来への不安や悲観、絶望感を感じていることがしばしばです。
- しかし、過保護や放任などの親の育て方や過去の家庭環境などに原因を求める考え方は、多くの場合問題の解決にはあまり役に立ちません。先述したように、実際にはさまざまな要因が重なって「ひきこもり」になっている場合が多いからです。
- したがって、「学校の先生が悪かった」・「職場の仲間が悪かった」等、他者に責任を押しつけることも、適切ではありません。
- 原因や「犯人探し」よりも、むしろこれから本人のどういう点を伸ばしていくのか、家族をどう応援していくのかを考えていくことの方がむしろ効果的です。
「ひきこもり」と不登校
「ひきこもり」相談事例のうち、最初に問題が発生したときの年齢は「19~24歳」が最も多いのですが、それについで「16~18歳」「13歳~15歳」となっています。学齢時に問題が起こった場合「不登校」という形をとることになります。
もちろん必ずしも不登校の子ども全部が「ひきこもり」状態になるわけではなく、心配しすぎる必要はありません。
では家族にはどんな応援が必要になりますか?
家族にも「元気」と「交流」が必要です。
- 家族は、毎日、子どもの行動を目を皿のようにして見守っていることも多く、ちょっとした子どもの変化に一喜一憂してしまいがちです。そのような緊張した毎日に疲れ果てたとしても不思議ではありません。この苦しい状況を誰かに相談したくとも、家庭内のことを親戚や近隣の人に相談するのはかなり勇気のいることです。つい、誰にも相談しないまま時間だけが経ち、家族自身もまた周囲から孤立してゆくこともまれではありません。
- こうした家族の孤立感や罪悪感を軽減することは、家族が専門家に相談する大切な目標の一つとなります。相談機関や福祉サービス事業所が家族にとって唯一本音を話せる場であることもしばしばです。また、持って行き場のない親の気持ちを、安心して話せる人や場所、家族が自分たちの経験や思いを共有でき、孤立感を和らげられるような場所を見つけることも大切です。
- 周囲の人々には、その家族の「しんどさ」を十分受けとめながら話を聞くことが求められます。
まず家族がどう対応するの?
家族の対応のコツは、「励まし」よりも「ありのままの本人を認める」ことです。
- 「ひきこもり」という状態は、本人が「元気や自信がなくなっている」状態であり、なおかつ「学校や仕事などに就かず社会的交流が少ない」状態です。「元気や自信がなくなっている」状態が改善していかないことには、「外出」や「就職活動」といった、新しいこと・未知のことへのチャレンジは始められません。とすれば、「ひきこもり」という状態を「怠け」や「甘え」ととらえて叱咤激励するのではなく、「元気や自信がなくなっている」状態をどう改善したらいいのかを考えていくことになります。
- 本人が「ありのままの自分」を認め自分らしい生き方を探っていくためには、「ありのままの自分」を認めてくれる他者の存在が必要です。まずは家族が「ありのままの本人」を認めていくことが、本人にとって自信をつけていくきっかけになります。「このままではだめだ」「どうしてこんなことができないんだ」という言葉や期待は、むしろ本人を追い込み、自信を失わせることにつながりかねません。
「ひきこもり」は時間がたてば改善していくの?
長期化している場合、放置していても改善は見込めません。まずは家族が専門家のアドバイスを求めましょう。
- 放っておくのではなく、そっと見守り、本人の様子や回復の状況に応じて、周囲の対応も変えていく必要があります。信頼できる相談機関や福祉サービス事業所に継続して相談をしましょう。
- 相談を重ねる中で、安心して家庭で過ごすことができ、次に安心できる人や場所を見つけ、そこで小さな成功体験を積み重ねることや、居場所や仲間の獲得を通じて、自分らしさを発見し、自分にあった生活を肯定的に選べるようになっていくことが、長期的な目標になります。
〈京都府保健福祉センター心のためのサービスガイドより〉